「ポジションは?」
「僕はスモールフォワードとシューティングガードです。
慎吾がポイントガードで、賢一がパワーフォワード。
ここだけの話、僕、副キャプテンだったんです」
戸崎はメンバーのことを、必ず本名で呼ぶ。
慎吾と賢一なんて名前、俺は初めて聞いた。
「賢一がキャプテンで、僕が副キャプテンですよ?
もう、バスケ部崩壊です」
「崩壊?」
「遠藤の時は強かったのに、僕たちのせいでボール遊びの部活……」
「遠藤さんがしっかりしてるんだな」
それは納得出来る。
なんて言ったって、日本の艶だ。
今や艶プロデュースの人気グループはたくさんいる。
そんな艶はカリスマだ。
Fにいても、きっと部活でも。
「優弥はおっかないです。
だけど、リーダーの素質はすごいです」
戸崎はそう言って、懐かしそうに目を細める。
その顔が、少しだけ碧のように見えた。
「優弥のおかげです。
僕たちがFとして……」
そう言って、戸崎ははっと何かに気づいたような顔をする。
そして少し紅くなってこう言う。
「少し休憩します」
戸崎は足早にフロアから出ていった。
俺はそんな戸崎の後ろ姿を見ていた。
「戸崎さん、信じられないことを言いましたね」
後輩が驚いたように言った。
それは俺も思う。
Fのメンバーの話をして、自らFと言って……
バスケの話だから、乗ってきたのだろうが。
戸崎はFの話は好きじゃない。
だけど、Fへの愛を感じる。
俺は、そんな戸崎にますます惹かれてしまう。



