「戸崎……奴は何してるのか」
遠くでお父さんが怒っている声が聞こえた。
まずい。
あたし、お父さんと同じことを考えていたんだ。
何だかショックだった。
あたしたちはやっぱり血のつながった親子なのだ。
だが、
「戸崎?」
普段蒼を戸崎なんて呼ばないスタッフたち。
仕事上、蒼は『碧』だ。
完全に頭にはてなが飛んでいた。
「蒼、唯の妹だからあんなことするんだぜ?」
あたしは賢一の声ではっと我に返った。
そして、思わず賢一を見ていた。
パーカーに、白いハーフパンツ。
パーカーのフードを被っている。
そして、フードから覗く顔は、少し困ったようにあたしを見ていた。
「普段女に興味ねぇ蒼が積極的に接する人って、だいたい唯の大切な人だろ?」
蒼が自ら仲良くしようとした女子。
思い浮かぶのは、文学部の女の子たちや、亜美、そして桜。
……本当だ。
みんなあたしの親しい人ばかり。
久美ちゃんみたいな多少の例外はあったりするものの……改めて気付いた。
あたし、蒼にこんなに愛されていたんだ。
その愛が当たり前になってしまって、気付かずにいたんだ。
胸が痛い。
じーんと痺れる。
今すぐ蒼に抱きついて伝えたい。
あなたが大好きです、と。
誰がどう反対しても、あたしはあなたを離さない、と。
あなたがくれるその無限の愛。
あたしも、あなたに無限の愛を届けたい。



