「桜ちゃん」
名前が呼ばれ、思わず顔を上げる。
するとそこにはあたしの大好きな碧がいて。
ステージでは決して見せない優しい笑顔であたしを見ていた。
顔にぼっと血が上る。
かっこよすぎて。
そして、その笑顔に胸を打たれて。
動けなくなる。
碧は笑顔のまま、あたしに黒色のギターを差し出した。
碧が時々使っている、碧の大切なギター。
それを差し出されたままに、あたしは両手で抱えていた。
「約束したよね。
ギター教えてあげるって」
「え?」
「何でもいいよ。何か弾いて」
碧の前で、あたしの下手なギターなんて弾けるはずがない。
しかも、碧のギターを使ってだなんて!
無理だよ、無理無理。
手が震えてしまう。



