紅さんの手は魔法のようだった。
あたしの短所を長所に変えていく。
「二重幅を生かして、アイラインはこう」
「唯ちゃんはピンクのチークが似合うね」
「髪も巻いてみようか」
そして、鏡を見てびっくりした。
あたしなんだけど……
いつものあたしではない。
新しいあたしがこっちを見ていた。
少し大人っぽくて、少し色気さえあって。
人って化粧ひとつでこんなに変わるんだとびっくりするほど。
「ほらね。唯ちゃん、超可愛いじゃん」
紅さんは、蒼みたいな満面の笑みで笑ってくれた。
「蒼、部屋に戻ったみたいだよ?
驚かせに行きなよ」
「あ……ありがとうございます!」
あたしは紅さんにお辞儀をして、部屋を飛び出していた。



