「まぁまぁ、紅も蒼も。
唯ちゃんの前で恥ずかしい」
お母さんがそう言って、あたしに温かいココアを入れてくれる。
そんなお母さんもやっぱり綺麗で。
見とれてしまうほどだった。
「唯ちゃん、今日は蒼のおごりで焼き肉だからね」
お父さんもカッコよくて。
この一家の美貌は犯罪だ。
蒼はサラブレッドだ。
そんな戸崎一家も、醜いアヒルの子であるあたしを受け入れてくれるなんて。
何だかホッとしたよ。
「ちぇっ。また俺のお金かぁ」
頬を膨らます蒼に、
「仕方ないじゃん。
あんたが麻雀負けたんだし。
それにあんた、金いっぱいあるでしょ?」
蒼の頬をつねる紅さん。
まるで漫才だ。
「銭ゲバ?」
苦し紛れにそう言う蒼。
それを聞き、紅さんの攻撃は余計にエスカレートする。
蒼の家庭は温かくて、そして賑やかで。
こんな家だから、蒼みたいなまっすぐで素直な人が育つのかな、と思えた。



