「いえ。……家に帰って彼女と食べるので。
……てか、どういう関係ですか?」
蒼の笑顔が逆に怖い。
だが、その殺気に店長は気付かない。
店長は冗談っぽくあたしを抱き寄せ、こう言った。
「この娘はバイトの娘ですが、僕のお気に入りで。
素直で可愛い娘ですよ?」
開いた口が塞がらない。
あたしは固まったまま蒼を見ていた。
ごめん、蒼。
誤解だよ。
でも、ここであたしが蒼の彼女だと言うと、色々面倒なことになる。
だから弱虫なあたしは、あなたを傷つけることしか出来ない。
必死に目で訴えた。
店長は関係ないって。
だけど蒼はあたしを見ることなく笑顔を作る。
「そうですか。お幸せに」
そう言って一礼して去っていった。
何だか蒼の後ろ姿は酷く惨めで。
あたしのために、ケーキまで買いにきてくれたのに、恩を仇で返すようなことをしてしまって。
どんな顔をして家に帰ればいいのだろうと思った。
あぁ、あたしは本当に馬鹿だ。



