そんな時……
自動ドアが開き、一人の男性が店内に入る。
ベージュのチノパンに、薄い模様の入ったシャツ。
目深に被った帽子からは、オレンジの髪が溢れている。
彼を見たとき、胸がとくんといった。
どうしてこのタイミングで入ってくるの?
「いらっしゃいませ」
気付かないフリをして声をかける。
蒼は顔を上げ、あたしを見た。
そして、その瞳が大きくなる。
思わずドキッと飛び上がってしまうあたし。
タイミング悪すぎだよ、蒼。
「あれ?バイト先って……」
そう言いかけた蒼に、
「ご注文はお決まりですか?」
わざとらしい笑顔で聞く。
あぁ、何やってんだろ、あたし。
どうしてこんなに蒼との関係を隠そうとするの?
蒼は隠したりしないのに。
熱愛宣言までしてくれたのに。
あたしの良心がズキっと痛む。



