ー唯sideー
眩しくて、きらきらしていて、そして楽しかった。
蒼から教わったものを、全て出し切った。
大丈夫。
近くに蒼がいるから。
難しいピッキング。
ベースとドラムの音を聴き、テンポを合わせる。
素早くミュートをかけたりもする。
客席を見る余裕すらない。
かっこ悪いけど、ひたすらギターを見つめていた。
いつもは蒼が使っているそのギター。
蒼が後ろから支えてくれているみたいで、ふっと身体の力が抜ける。
そして、少しだけ生まれた余裕。
あたしは顔を上げ、蒼を見た。
ただ立ってベースを弾いている蒼はそれだけで様になっていて。
さっきの緊張はどこにいったのだろう。
あたしを見て、ふっと笑う。
それで、出来る気がした。
難しい間奏も、最後の締めも。
気付いたら身体全体で音楽を感じていて。
それがすごく楽しくて。
あぁ、蒼はいつもこんな世界を味わっているのだと実感する。
それは想像していたよりずっと煌びやかで、美しい世界だった。



