そんな本格的なステージだったけど、総じて演出は楽しかった。
長い間奏でハルが一発芸で瓦割りをしたり、スラムダンク並みのボール回しをしたり。
ステージを駆け回り、観客は一斉に湧いた。
その間にも、
「ちょっ……
碧の彼女、ヤバくない?」
「ヤバい!一ヶ月であれ!?」
前の女子たちがはしゃいでいる。
それもそのはず。
唯ちゃんは間奏を弾きこなし、チョーキングなどの小難しい技術もさらっとこなす。
「唯ちゃん、頑張ったな」
優弥が珍しく人の技術を褒める。
「あの状態から、ここまで成長するとはな。
いい味出してんじゃねぇか」
そうだよ。
唯はさすが蒼の彼女なだけある。
何だか俺、感動したな。
唯と蒼が重なって見えた気がした。
「俺たちも明日、頑張らないとね」
珍しくそんなことを言っていた。
「あぁ。唯の頑張りに負けねぇように」
賢一も遠くを見つめ頷いていた。
ふと、蒼が羨ましく思えた。
周りに騒げる仲間がいて、バカを笑ってくれる人がいて。
だけど……
邪念を払うかのように首を振る。
俺だって幸せだ。
Fのみんながいてくれるから。
みんなのためにも、俺は頑張らないと。



