だが、存在感がないのは姿だけで。
その低音は、演奏の要となって重く深く響く。
「あいつ、ベースのセンスがないって嘆いてたけど、上手くね?」
隣で賢一が唸る。
「前聴いた時は、指弾き超下手だったよ」
基本ギターをピックで弾いている蒼。
だけど、今回はあえてベースを指弾きすると言った蒼。
蒼には二本の指で均等な音を鳴らすのが難しかったようで。
蒼なりに苦戦していたのだ。
だが、今はすっかり滑らかな音になっていて。
自己主張せず、でも、しっかり基礎を作る。
「さすが蒼、分かってるな。
自分の役割」
隣で優弥が唸った。



