「あー、良かったよ。 たいしたことなくて」 医務室を出た瞬間、蒼がぽつりとつぶやいた。 「ううん、たいしたことあるよね。 痛かったよね」 そう言って絆創膏の貼ってあるあたしの指に触れる。 割れ物に触れるようにそっと。 「ギタリストは指が命なのに。 ……その前に、俺の大切な唯ちゃんに……」 その、ギャグのような大きなサングラス越しでも分かる。 蒼、すごく悲しい顔をしている。