「唯ちゃん」
あたしを見るなり、あたしを呼ぶ蒼。
そして、伝票を持つあたしの手をぎゅっと握る。
「だっ……駄目だよ。
今仕事中だから」
真っ赤になったあたしはそう言うが、
「なに?
店長にはほっぺにきゅんされてたのに?」
蒼の言葉にぎくっとする。
それにしても、ほっぺにきゅんって……
「唯ちゃん、店員姿も可愛いねぇ」
甘い言葉に身体がおかしくなりそう。
「俺、唯ちゃんお持ち帰りがいいや」
あぁ、仕事中なのに。
蒼はただの客なのに。
なのに、あたしの胸のトキメキは止まらない。
「いい加減にしろよ、馬鹿蒼」
ようやく静止をかけてくれるハル。
その言葉に少しほっとした。
だけど……
「あれ、碧じゃない?
超かっこいい」
近くにいた女性は蒼を指さしていて。
「だけど、店員にナンパしてたよね?」
その言葉に、
「ナンパじゃないし!!
唯ちゃんは俺の彼女だしッ!!」
ムキになって会話に乗っかる蒼。
そんな蒼をハルとケンは必死で止めていた。
あぁ、何だか嫌な予感しかしない。
今日のバイト、先行きが不安だ。



