「……で、何の用?」
ため息交じりの蒼の声が部屋に響く。
「ちょっと相談があってだな……」
優弥さんはそう言って、蒼の部屋に入っていった。
きっと、あたしには分からない、Fの重要な相談なんだろう。
蒼との甘い時間が打ち切られるのは切ない。
だけど、Fが成長するのは嬉しい。
あたしは、陰から応援しているよ。
「唯ちゃん」
蒼がリビングのドアの隙間から顔を出した。
「ごめんね、急用で」
「ううん、大丈夫」
とびきりの笑顔を返す。
すると、申し訳なさそうな蒼の顔が、少しだけ緩んだ。
「さっきの録画、見ていいからさ。
用事終わったら、いっぱいぎゅってするからさ」
その優しさに胸が痛くなる。
「うん。待ってるね」
あたしはもう、蒼のことだけを考えている。



