苦手だとばかり言っていてはいけないんだ。

別の女の人と隣にいる拓馬を見て、拓馬が他の人を好きになるかもしれない可能性があることを思い知った。出逢ってすぐに好きだと言ってくれていたから、私の知っている拓馬は私を好きでいてくれる拓馬でしかなかった。

それがどんなに甘えたことだったか、いかに胡座をかいていたか。

拓馬の大きな優しさと付き合いの長さに安心しきって、何もしていないくせに不安になるだけだった。

伝えることが苦手だなんて、どれだけ傲慢な言い訳だったのだろう。伝えなきゃ、伝わらない。


「私に、飽きないで。」


やっと言葉にした瞬間、また涙が零れた。


「ん?飽きないでって何….。」

「拓馬がひとりで寝るの嫌だ。一緒に寝たいって思ってくれないの嫌だ。ずっと別々に眠るの、嫌。」


言っていることがめちゃくちゃだ。けれど、拓馬の言葉通り、しっかり目を見て告げることが出来た。


「一緒がいい。隣で寝たい。」


また一粒落ちそうになった滴を堪えた。文字にしてみたらこんなにシンプルなことだったんだ。