たゆたえども沈まず


急に久喜がしゃがんで、私もぐんと下に引っ張られる。

「これ紫だ。はい」

「あ、ありがと」

掴まれていた方の掌に乗せられてから、反対の方の掌に移動された。

何か意味があるのかと思っていたら掴まれていた方の手を握られる。

黙って立ち上がって、海岸線を歩く。

久喜は誰かに借りたのかビーチサンダルで、私はスニーカーを履いている。

間接キスをして、手を繋ぐのに、私たちは何処までも友達なんだよなあと思う。

私は久喜が好き。好きだけれど、きっと久喜は私をそういう対象として見ない。

見てないから、出来るんだ。