「いや、そーいうんじゃなくて…」
ギルクはモゴモゴと口答えする。
「アレンはこんなの全く反応してないじゃない!!ギルクのバカっ」
ギルクはアレンを見た。
「あ?」
アレンはめんどくさそうな顔をして突っ立っているだけで、目の前の美女水魔には何の反応も示さない。
「どーでもいいじゃん、そんなの」
アレンはだるそうに水魔を見る。
〔…女、美女!!〕
水魔が突然声を上げた。
目はレイの方を向いている。
〔消えろ!美しいのは私だけ!〕
水魔はレイに水でできた腕を伸ばした。
が。
いくらレイを掴もうとしても、見えない何かが邪魔して触ることすらできない。
アレン達は目を見張った。
「やーね、そんなにビックリしないで。これはモレンがやってくれてるのよ。」
レイは上品な微笑みを浮かべ、腕を前に差し出した。
そこに現れる、モルモットのような黄色い生き物は…
「精霊!!」
イルが叫んだ。
さっきまで不機嫌だったのに、「かわいーッ」と言ってきゃあきゃあ騒ぎだした。
「レイ、精霊士?」
アレンが聞いた。
「ええ、そうよ」
レイは微笑みながら答えた。
精霊士というのは、精霊を呼びその力で戦う、一種の魔法使いだ。
「モルモットが結界張ってるぞ!」
ギルクが興奮して言う。
水魔リップルは黙っていた。
「? リップルさん、どうしたの?」
レイが首をかしげて聞く。
しかし、リップルにその声は届いていなかった。
〔アンタ、名前は?〕
リップルが話しかけたのは、アレンだった。