「…負け、認める?」

アレンが剣を向けたまま聞いた時、老婆がピクリと動いた。


「……!?」

老婆を何かの光が包む。


「…“魔”の力…」

舌打ちしながらアレンはさっと攻撃を避けた。

老婆の攻撃はそのままレイとギルクに向かっていく。


「…レイ、ギルク!!」


普段は冷静なアレンがめずらしく叫んだ。



すると。




「……え…?」



攻撃は身構えた二人の真ん前で弾け飛び、


――――消えてしまった。



「い…、今の何…?!」


レイがキョロキョロと辺りを見回す。

ギルクは口をぽかんと開けて、レイの後ろに突っ立っていた。



「…誰じゃ、今の魔力を使ったのは!」


最後の攻撃が失敗し、老婆は怒り狂う。



「…あたしじゃないッて!」


イルは目を見開きながら、突撃してきた老婆をかわすとその首にチョップした。


あっけなく老婆は崩れ落ちる。


「…誰…だったのかしら。私も違うわよ…?」


レイとイルの視線は何も言わないアレンとギルクに向いた。


「…ギルクは前に、精霊の丘で魔力が全くないってわかったしねぇ?」

「…アレンなの?」


二人の女子はアレンをジッと見つめた。

その視線に俯いていたアレンは顔を上げる。


「…違う…俺じゃない」


口元を抑えながら、アレンは老婆を見下ろし否定した。

してから、言う。


「…イル…、もしかしたらこの老婆、ギルクの記憶盗ったんじゃねぇか?」

「え?でもギルクは頭打って…」

「…武道家がそんくらいで記憶喪失なんてのはないだろ。」


その言葉を聞いて、イルは老婆のもとに跪いた。