結の言葉に俺は、かおを歪めた。


「葉月のとこにいけ!俺は、葉月を悲しませたくない」


「葉月はあたしのこと見えないのよ!」


「それでも俺は、いやだ」


仮におばけとはいえども、女。



葉月の彼女。



さっきの俺は理性を失い、親友の彼女の誘惑に負けた。


この先、俺がいつ自分自身を失うかわからない。



未経験の俺には、苦しい生活になる。



「お願い!勉強とか色々なお世話とかするし、それに成仏するまでの間だけ!」



日頃お世話になっている葉月の彼女だ。



「じゃあ頼みがある」



「なーに?」


結は首を傾げ、その仕草に不覚にもドキッとしてしまった。




「俺を、誘うなよ」



「気持ちわる、お前を誘うわけないだろ、はい、きーまり!」



結はわーいわーいと華麗なステップを踏みはじめた。



こいつ。


生前と変わらなさすぎて、やっぱり苦手だ。



俺は、ひとつため息をついた。