ちゃんと伝えられていたなら
藤宮光のこんなに冷たい顔を見なくてもすんだのに
藤宮光のこんなに悲しそうな顔をみなくてもすんだのに
どうして私は嘘を伝えてしまったんだろう
「千晶先輩」
いつもより少し低い声
「もう、こんなお試し終わりにしましょう」
揺れる瞳で私をみて
「最初から馬鹿げたんだ。こんな偽物の関係なんて。」
感情のない言葉を吐く
「あなたといても恋は知れないと気付きました。」
それならどうしてそんなに苦しそうなの?
「だから、サヨウナラです。」
もう離れると話しているのはあなたなのに、どうしてそんなに泣きそうなの?
「今まで俺の暇潰しに付き合ってくれてありがとうございました」
逃げるように教室を出ていった藤宮光をみて、ペタンと床に座り込む
冷たいものが頬を伝った
「…はは、は」
私たちってお試しだったんだよね
偽物だったんだよね
こうして言われなきゃ時々本当に忘れていた

