こいつ…またやりやがったな




最近分かったこと。




それは丹田千晶は怒ると物を投げてくるってこと。




しかもテスト期間だけにそれは限定される。






「ほら、がんばってくださいよ」





俺は日本史の教科書を拾って丹田千晶に渡すと、丹田千晶の頭を軽く撫でた。




「……うん」




そうすると丹田千晶はどれだけ怒っていても落ち着くんだ




俺はそのときに少しだけ優越感に浸って、そして少しだけ痛みを感じる




《彼氏》の特権を感じ、《お試し》のずるさを感じる瞬間。





俺は丹田千晶の彼氏であって、彼氏じゃないから




丹田千晶を好きだって気持ちに嘘は少しもないけど、今の状況では俺は物につられてるだけだ。




ゲーム感覚で始まったこの恋。




そろそろゲームじゃ駄目だよな




自然と手に力が入る




「千晶先輩、すいません。俺ちょっと友達のとこにいってから迎えに来ますから、ここに居てくださいね?」





俺の言葉に千晶先輩はかろうじて頷いて、また教科書とにらめっこを始めた





金どんくらいあったかな…




俺はそんなことを考えながら学校から3分のファーストフード店へと走った