「中学の時、千晶は俺と慎に言ったんだよ。『私は愛なんていらないの。愛している自分なんていらないの。だって愛は憎しみに変わるときがあるでしょう?そんな酷い人間になんてないたくないから』」
翔太先輩はもう完全にぬるくなったコーヒーを少し飲んで、また遠くを見つめた
「俺は千晶を家族として好きだったからその言葉には特に衝撃を受けなかった。過去もしってるしな。でも、慎は違ったんだよ。あいつは千晶の詳しい過去も知らないし、なにより千晶を恋愛的に好きだったんだから」
好きな人に思いも告げていないのに愛せないと言われたとき、人はどれ程の衝撃を受けるんだろうか
「私、藤宮光のこと愛せない。ごめんね」
そんな言葉を想像しただけで、苦しくなる。
「あいつなりに押さえ込んで押さえ込んで。ようやくそのことを受け入れたのに、光、お前が登場したんだよ」
悲しそうな、嬉しそうなそんな、矛盾した表情を浮かべて翔太先輩は俺を見た
「光が、千晶を変えてくれた。光が、俺たちを変えてくれた。俺はそれがすごく嬉しかったけど…けど、慎は違ったんだな」
眉を八の字にしてうつむく翔太先輩

