「あの日、慎は誰に千晶の家を聞いたのかって」
その言葉に心臓がドクリと変な音をたてた
甘い音ではなく、嫌な何かを本能的に感じ取ったような音
「…慎、先輩が?」
あの日丹田千晶に会いに行ったのは慎先輩だった
その現実を受け止めきれないまま、冷静を装う
「そうそう。慎は千晶の家を知らないはずだったからさ。彼氏にこんなこと言うのはおかしいと思うけど…慎って千晶のこと、たぶん好きだろ?だからどうしてもお見舞いに行きたかったんだと思うんだ」
慎先輩が丹田千晶を好き。
そんなことは初めて丹田千晶を見た日から知っていた。
試合が終わってから丹田千晶を見る慎先輩の顔が優しかったから。
でも俺はそれを知らないふりをして、間違ってる自分を正当化して、丹田千晶に近づいた。
「でも、千晶もその理由を知らなかった。美沙も菜々子も知らなかった。俺ら以外に千晶の家を知る奴はいないし…」
そこで翔太先輩は足を止める
すぐそこに、丹田千晶の住むマンションがあった
だから止まったわけじゃない
止まったのはそこに立つ人を見つけたから
「…慎」

