「離れるとかひどくないっすか?」
形のいい唇を尖らせている藤宮光
「お前の登場の仕方が悪い」
「ち、千晶ちゃんに優しくしてっ」
美沙ちゃんと菜々子ちゃんに責め立てられ、ますます唇を尖らせていく。
「みんなしてギャーギャーうるさい千晶のどこがいいんだか…」
不思議そうに呟いた翔太に蹴りをいれる。
「いってええええ!」
騒ぐ翔太を無視してふと窓際を見る
そんないつもと同じ賑やかな空間のなかで、いつもと違うく静かな人が一人
「………」
「…慎ちゃん?」
慎ちゃんはぼーっと窓の外を眺めていた
「慎ちゃーん?」
私がもう一度声をかけると肩を揺らしてゆっくりとこっちを見る。
「…あ、光来てたんだ…」
藤宮光の存在を捉えると、切れ長い目を柔らかく細めて微笑んだ
「うっす」
ペコリと頭を下げた藤宮光に近付いていって、わしゃわしゃと頭を撫でた慎ちゃん
そして、散々撫で回したあと
「…俺、ちょっと部室行ってくるわ」
みんながいってらっしゃいという暇もないほど、急にすっと出ていった。
…どうしたんだろう
藤宮光はなぜかぎゅっと手を握っていた

