俺はドキドキしていることに気づかないふりをしながら、ゆっくり口へとお粥を運んだ。
「…どうっすか?」
人生で初めて作ったお粥
一応味見はしたけど丹田千晶の口に合うかどうか…
「…うん、おいしー」
ふにゃふにゃした笑顔でそう言った丹田千晶
熱のせいかいつもより言葉遣いも雰囲気も柔らかい。
「まだ食べますか?」
半分ほど食べたところでそう声をかけると、軽く首を横に振った
「じゃあ、薬のんでくださいね」
こくんと頷いた丹田千晶を見届けて俺は片付けを始める
「…藤宮光」
あらかた片付けも終わった頃、弱々しい声に呼び止められた
「なんすか?」
視線を合わせるように腰を屈める。
丹田千晶は眉を八の字にしてなにかを言おうとしては言わずに黙っていた。
…またか意地っ張り。
「苦しいなら苦しいって言わなきゃ助けてあげませんよ?俺優しくないんで」
俺の言葉に丹田千晶の肩がびくっと跳ねた
…どうしたんだ?
心配になっていると
「…で」
丹田千晶は俺のワイシャツの裾を掴んだ
「…一人は、寂しいし怖いから…まだ、帰らないで」
涙目で見上げた丹田千晶に俺は悩むことなく頷いた。