「…うん、分かんないよな。ごめんな、千晶。お前と慎は腹違いの子なんだよ。ごめんな。」



ごめんと何度も繰り返したお父さんは紅茶が入ったカップを持った




その手はカタカタと音をたてそうな程震えている





冷静に関係ない物事を考えられているのは、余裕がないからだ。




「…慎ちゃんは、知ってたの?」



そう言った私の声も震えていた




「慎には、昨日話したんだ」





答えたのはお父さんで、お母さんの声も慎ちゃんの声もまだ全然聞いていない




「何で、死んだなんて嘘ついたの?慎ちゃんも、それが嘘だって知ってたの?」




慎ちゃんの口から聞きたくて、慎ちゃんを見て話しかける




「そうでもしないと、二人と話す機会なんて作れないと思った。慎は千晶を避けている。千晶は私たちを避けている。会えるわけないと思ったんだ。慎のことも騙したんだ。すまない。」






それでも答えたのはお父さんで



慎ちゃんはひたすらうつむいている





「ねえ、慎ちゃん何か言ってよ。ねえ、ねえ!慎ちゃん………ねえってば……」




黙り続ける慎ちゃん。



慎ちゃんの頭をポンポンとするお父さん




ああ、、そっか。



その子とこの子どっちが大事なの?




それで、慎ちゃんを選んだんだもんね




私は捨てられたんだもんね




「ごめんね、お父さん、お母さん、慎ちゃん」




私はすくっと立ち上がるとカバンを持った





「千晶?」



やっと聞こえたお母さんの声だったけど、もういらなかった。




「私が邪魔なんだ、よね。私はいらない人間なんだから」





どこかでずっと、色々なことがあったけど必要とされていると思っていた。




生きててほしいと願われていると思っていた。






でも、そんなことなかったんだね




私が生きてても。死んでても。




この人たちは慎ちゃんを選んだんだ




その時点で、私はいらなかったんだね





「千晶!!!!!!!!!」




誰かの叫ぶ声が聞こえたけど、走り出した




部屋を出て、非常階段で下まで行く。





もう、なんだってよかったの。全部。