意地悪な君の恋の仕方







「千晶…慎…」




女の人の綺麗な声が聞こえた




「千晶っ!」



その後数秒、私は大きな衝撃と温かさに包まれる。




「久しぶり…大きくなったね」





その言葉に恐る恐るその背中に手を回す





「久しぶり…お母さん…」




お母さん




その言葉をこの人に言ったのは何年ぶりだろう。




久しぶりに使ったら少しだけくすぐったくて、でも幸せで。




ああ、私はこの人に会いたかったんだと初めて気付いた





「千晶…悪かったな」




少し低めのその声に顔をあげると、昔よりシワが増えたと思った。





「お父さん…」




そう言うと、私を抱き締めていた強い腕が少し緩んだ。




チャンスとばかりに顔をあげる。





二人ともこんな顔してたっけ?



いや、してたんだろう。




私の頭の中にある二人の顔があの日のままだっただけで、きっとずーっとこんなに優しい顔だったんだろう。




あの冷たい顔は私の思い違いだったんじゃないかと思うほど、優しく暖かい顔だ。





「さぁ座って。全てを話そう。な、慎」




頷く慎ちゃんに困惑しながらも私は大きなソファーのはじっこに座った