意地悪な君の恋の仕方





「千晶様でいらっしゃいますね」




後ろから聞こえた声に肩が跳ねた



「そうですけど…」




そこにいたのは40代後半くらいのスーツの男の人



銀縁の眼鏡をかけていて頭が良さそうだけど、ぱっと見て分かるほどの筋肉を持ち合わせていて




不安になった私は慎ちゃんの服の裾を掴みながら答えた





「なにか用ですか?」




それを見かねた慎ちゃんが私の代わりに話してくれる





「もしこの子が丹田千晶様ならやらねばならんことがあるのでな」





慎ちゃんに対してなぜか急に口調が変わった




「そして、お前は桂木慎だろう?」





私のことは一度も見ずに慎ちゃんと会話する




「そうっすけど…」




「では、千晶様、そして桂木慎。こちらへ来てください」





そう言って私たちに背を向けた男の人



どこに行くんだろう、怖い




その気持ちはもちろんあったけど、それより大きかったのは




「待ってください!!!まだ二人に会ってません!!!!!」