「丹田、千晶…」
耳元で私の名前を囁く、低く柔らかく美しい声に頭がクラクラする
声だけじゃない。
後ろから回された男らしいその腕にも
二度と失いたくない、その体温にも
頭がクラクラして…視界がぼやけていく
「藤宮、光?」
私が欲しくて欲しくて仕方がないもの。
もう二度と偽りだとしても、私のものにはならないと思っていたのに
急に現れて、そして今、私は抱き締められている
「どうしてここに?記憶は?」
早まる鼓動に気づかない振りをして、冷静にそう聞く
けれど、返事はなくて
私にかかる重みが増えた。
「ちょっと…?寝てるの?」
顔は見えないけど、微かに頬にかかる息が寝息へと変わっていた
私は肩をがくっと落として、病院へ電話する
思い出してくれたかと思ったのに…
期待させんな!バーカ!!!!!
そう思って頬をちょっとだけつねる
そしたらパアッと光に包まれて
気付くと私は一人
「藤宮光?」
どれだけ探しても、見つからないの。
もう、きっと永遠に会えない