「…起きた?」
声のする方をみると、疲れた顔をした菜々子先輩がいた
「…俺……」
たしか、丹田千晶を探すために脱走して、隠れてるうちに女の人と双子に出会って…
そしてどうしたんだろう?
「なにも、覚えてないよね」
少しだけ悲しそうに笑った菜々子先輩
「…俺、あの後どうしたんですか?」
自分がしたことを自分がしらないなんてモヤモヤする
まぁ、記憶を失った時点でそのモヤモヤは既に始まっていたんだけど
「教えてあげたいんだけどね」
この言い回しは、教えられないということ。
それを感じて肩を落とす
「私からは言えない。代わりに、これ」
菜々子先輩から渡されたのは小さな袋
中には一枚の紙と箱が入っていた
「…これは?」
「まずは、開けてみて?そうしたらすぐわかるよ」
その言葉通り中身をあけた
「これ………!!!!」
中に入っていた箱の中身は俺の携帯だった
「美沙ちゃんが、あの別荘に戻って探してきてくれたの。ベレンダのすみに落ちてたって」
俺のためにわざわざ…
そして、入っていた紙にかかれていたのは11桁の数字
「それは、千晶ちゃんの番号。光くんが起きる前に先生の許可は貰ったから、公園にでも行ってかけておいで?」
それだけを言うと菜々子先輩は出ていった
俺に気を遣ってくれたのか
「いくかな」
今度は追われながらじゃなく、静かに病室をあとにした

