「思い出した?」
俺は痛む頭に触れながら、ゆっくりと頭を横に振った
なんだろう、もう少しなんだ
声は聞こえるのに、顔が思い出せない
俺が思い出せる千晶ちゃんは、顔にモヤがかかってて………
「そっか、まあ大丈夫だよ。きっといつか思い出せるから」
あ、りんご途中だった。
菜々子先輩はそう言うとりんごを剥きはじめる
二人も好きだったりんご
いつか、また、一緒に……
そう思っていると
「光くんっ!大変よ!!!!」
担当看護師の山田さんが病室に駆け込んできた
「山田さん、駆け込み入室はダメだっていつも俺に言ってんじゃん」
「そんなことはいいの!!!大変なの!丹田さんが…!!!!」
丹田、って誰だよ
「千晶ちゃんがどうしたんですか!?」
千晶ちゃんって…丹田千晶って言うのか
「丹田さんが、行方不明なの!!!!!」

