意地悪な君の恋の仕方



「焦る気持ちは分かる。でも、無理はしないでくれ。」




目覚めて最初に言われた言葉がこれだった。



先生の悔しそうで、悲しそうで、でも安心したような表情




別に、焦ってもないし無理もしてねぇんだけどな…




「光くんっ!」




先生が出ていくと同時に走ってきた菜々子さん




その目には涙が浮かんでいた




「よかっ…!もう、ダメなのかと思って……」




そう言って抱きついてくる。




いや、なんだろう。



菜々子先輩かわいいし、俺的にはラッキーなんだけど…




「先輩、離して。それで、俺の話聞いて」



なんでだろう、この体温じゃない。





俺の言葉に菜々子先輩ははっとしたように俺から離れた




「ご、ごめん…。」




そう言って側にある椅子に座ると真剣な表情で俺をみた。




「俺は、焦ってない。正直記憶がなくても不便しないし、思い出さなくてもいいかも、なんて思う瞬間もある」




菜々子先輩は明らかにショックを受けた顔をして俯いた。




どんな思いなのか俺にはよくわからないから…話を続ける




「でもね、聞いてよ先輩。俺の中に別の誰かがいるのかな?ってくらい、記憶を思い出そうって勝手に脳が動くんだ」





菜々子先輩はゆっくりと顔をあげた




「思い出したいって、心が叫んでる。でも、記憶を無くした頭はそれを簡単には許してくれなくて頭がひどく痛む。正直、すっげぇ辛い。辛いし怖いよ、この先どうなるのか分かんなくて」




震えそうになる手に力をいれる





「それでも…俺はやっぱり思い出したいんだ。どれだけ頭が痛くなってもいい。苦しくなってもいい。さっきみたいに死にかけたって構わない。記憶が抜けてる今の俺は俺じゃないんだ。だからさ…」




眉をハの字にしている菜々子先輩と目を合わせる






「俺に、千晶ちゃんと翔ちゃんの話をしてほしいんだ?例え、俺が頭痛に苦しんでいても止めずに…」




先生、俺は焦ってなんかない




無理だってしてない。




ただ知りたいだけなんだよ




思い出せなくたっていい




また知ればいい。




ただ、知りたいんだ



菜々子先輩はゆっくりと頷いた