「…単刀直入に言うと、一種の記憶障害です」
藤宮光の検査が終わると呼ばれた藤宮光の両親
私たちにも関係あることだから、と私と翔太も一緒に入ることを許してくれた
「記憶…」
お母さんはハンカチを口元に当てながら、小さくそう言った
「はい。でも、生活等には支障はないでしょう。ご家族のこともしっかりと覚えています」
そう先生が言うと、お父さんは泣くお母さんの肩を抱き寄せた。
「…忘れてしまっているのは、千晶さんと翔太くんのこと。そして慎くんと話しているときの記憶だけです」
「…え?」
先生の言葉が信じられない
「彼はテラスから転落し頭をぶつけた」
そう、目撃者の慎ちゃんがそう言っていた
『光が!!!テラスの柵に座っていて落ちた!!!!』
あのとき、私たちにそう助けを求めたのだから
「となると、落ちる前にあなたたち二人のことを強く考える出来事があったんだと思います。そしておそらくその出来事は、慎くんとの会話」
慎ちゃんが…
「慎が俺らのことを光と話してたってこと…?」
でも慎ちゃんは、バスケのことを話してただけだって…
「その可能性が一番高い。そうでなければこんなこと考えられません」
ねえ、慎ちゃん
本当のことを教えてよ
私に嘘なんてつかないでよ、慎ちゃん

