「はのん、警察のお兄さんたち呼ぶから、大丈夫だよ」
「はのん、パパがいるからな」
なんて、言っていつまで甘やかせるつもりだと言いたくなった。
しかし、そのあと俺は、自分の家族のことを思い出してしまった。
その瞬間、俺の中で静かに眠っていただろうその感情が、あらわになった。
悲痛な声を上げ、その幸せそうな家族に向かって、走り出す。
最初に狙ったのは、父親、次に母親だった。
人間の、体はなんて弱いのだと実感させられるようなほんの一瞬だった。
すぐに、そのふたりは遺言の一つも残さず、倒れていった。
俺は、そのあとに見た子供の驚愕したあの顔を忘れはしない。
だって、今までで一番楽しい瞬間だったのだから。