途中下車~たどり着いたひとつの恋~


公園前のアナウンスが流れ、ボタンを押そうと立ち上がるおばあちゃん。

いつも病院前のバス停で降りるのに。

間違えているのかと心配になり、思い切って尋ねてみる。

「ここ公園ですよ?」

おばあちゃんは笑って、

「日曜は病院、お休み」

「あ、そうか」

「私ね、バスに乗るのは今日で最後なの。明日から施設という〝町〟にお引っ越しだって。今まで病院の前でしか降りたことなかったわ。でもね、いつも公園を歩いている人を見て、うらやましいと思っていたの。だから最後くらい寄り道してみようかなって。それにね、男の子が教えてくれたのよ。この公園、パワ……パワ?スポット?だから、公園の木の幹に触れると幸せになれる。足も絶対治るからって。その言葉を、信じてみたいのよ」