バスが動き出したところで、「いつもね」おばあちゃんは唐突に口を切った。 「えっ?」 「席をとっておいてくれる子がいるのよ。お嬢さんと同じくらいの男の子でね」 ……それって吉永君のことだよね。 おばあちゃん、気付いていたんだ。 「さりげなくね、譲ってくれるのよ。私はそれがうれしくてね、それが私の、毎日の元気の源だったの」 私も、そうだった。 吉永君に会えることがうれしくて、楽しくて、幸せだった。 その瞬間を私は……捨てることが出来る?