滅多にしない笑顔を保持していたせいで頬が引きつってるわよ、全く。

 事務所のドアを開けてから、会議の為の出払ったガランとした部屋の中。誰もいない部屋に整然と机やパソコンが並ぶのをみていたら、ついに私は笑い声を上げてしまった。

 綺麗なあの子達の、唖然としたマヌケな顔。

 見開いた目と、驚いた表情。

 やり返してしまったわ――――――――――長いこと、そんなことしてなかったけど、本当に久しぶりに。

「ふふ」

 にやけてしまう頬を叩いて、パソコンの電源を入れる。

 ダンならどういうか。それを考えて、ついやり返してしまった。だけど、面倒臭いと思うよりも、今の私は喜んでいるみたいよ。

 自分のプライドを守ること――――――――こんな感じ・・・だったのかな?

 パスワードを打ち込みながら、また笑い声を零してしまった。

 ちょっと、気持ちよかったかも。解放感もあったかも。

「ねえ、ダン―――――――」

 うっかりしていた私は、そこでまたもや神の名前を呼んでしまった。誰も部屋の中にいなくて、嬉しかったから、つい。

 だけど、そこには返事をしてくれる神の姿もなかった。

 ハッと口元を覆う。

「・・・あ」

 呟けど、一人。

 笑顔が消えたのが判った。

 そうだ、ヤツはいないんだった・・・。