ー1階ー

下の階へ着くと、家庭科室の扉が開きっぱなしになっていた。

そして、準備室の前あたりに何かが蠢いている。…暗くてよく見えない。

「誰かいるのか…?」

遠くながらも声をかけてみるが、返事がない。

慎重に、それに近づいて見ることにした。

ーー愛乃さん?

準備室の前に、愛乃さんが倒れているのが確認できた。

「大丈夫か。」

声をかけると、愛乃さんは小さく呻き声を上げた。

ぐったりしているので、とりあえず教室へ連れて行くことにした。

ー教室ー

教室へ愛乃さんを運び、教室の電気をつけた。

…電気をつけて愛乃さんの安否を確かめようとした。

しかし、自分の目に映ったのは物凄く惨い姿だった。

「…なんだ、これっ…!」

左目が潰されていた。

いや、抜き取られていた。

出血が酷いので、あまり時間は経っていないのだろう。

『ぅ、ぁぁぁっ……!!』

愛乃さんは、左目を抑えて悶えている。

とりあえず、教室に置いてある応急処置ボックスを開け、包帯を眼帯がわりに巻いてあげた。

「立てる?大丈夫…じゃなさそうだな。何があったんだ。」
『………。』
「無理しなくていいよ。水帆を見なかったか。」
『水帆はきっと…わかんない、わかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんないわかんない…!!!』

「…!!」

怯えていた。震えた声で「わかんない」
と連呼している。

『水帆はね、きっともういないよ。水帆は…あたしの目を潰すようなことはしないッッッッッ!!!!!!!』

怒号が教室に響いた。

さすがの僕でも少し表情が強張る。


…水帆が愛乃さんの目を潰した?