美紀さんは首を横に振る。


「謝らないで、あたしが悪いの……

本当、ごめんなさい……」


美紀さんはあたしの体を離れ、

少しだけ顔を上げる。


その顔はやっぱり酷くて……


どうにかして、美紀さんを龍の兄から守ってあげたいと思うけど、


でも………


「美紀さん……」


「はい……」




あたしに美紀さんは守れない。




「此処で龍の事待ってて」


「えっ?」




美紀さんを守れるのは……



「もう少ししたら、帰ってくると思うから!

あたしねっ約束があって、行かなきゃいけないんだ」


「でも……」


「ごめん!あたし行くねっ!」



龍しかいない。




あたしは寝室へ行くと、

クローゼットに入っている自分の荷物を全て取り出し鞄に詰める。



此処に来た時から、たいして増えていないその荷物は鞄3つに収まり、

全て詰めるとあたしは家を出た。