パリパリとお煎餅を鳴らした。
トウマくんの手が震えていた。
お爺さんが、のんびりと話し始めた。
「先々代の住職は…つまり私の父は、非常に厳格な人でございました。
頭が変形するほど殴られた…。
戦前の父親というのはたいがいそういうものです。
私の兄と申しますのは、それはそれはヤンチャ坊で、
まあよく父にゲンコツをくらっておりました。
父は、菊の栽培が好きで…。
ある日、兄がよりによって一番大事にしていた鉢を割りましてね、
父は怒って、兄を木に縛り付けたのです。
これにはさすがの兄も『許してくれ許してくれ』と泣きわめいておりました。
けど、翌日になるとケロっとして…また悪さをするのです。
こんな兄でしたから、寺の仕事を嫌いまして、
徴兵の歳になりますと検査を受けて、さっさと入隊してしまったんです」



