ポン、と頭に温かい何かが触れる。
びっくりして顔を上げると、美都場が優しい表情を浮かべながら頭をなでてくれた。
「裏切ったとか裏切られたとか、親友だったとか親友じゃなかったとか……ガキじゃあるまいし、いちいち気にしてても仕方ないよな。オレは大丈夫だから、マヤがそんな顔すんなよ」
美都場のその言葉は……暗い気持ちになってしまった私を励ましてくれてるみたいだった。
胸のすぐそこのあたりが、痛いくらいに締め付けられる。
つい最近まではいろいろなことがあったけど、その嵐が一時的とはいえ収まりつつある今、やっぱり私は美都場に惚れているのかもしれないと実感する。
恋なんて、今までしたこともない。彼氏だっていたことないし、私には無縁の世界だと思っていた。
好きになっちゃいけないのはわかっているけど……
だって、美都場には……桜が……
なんとなくだけど……美都場は桜が好きなんだと思う。そして桜も美都場が好き。
前に学校の中でふたりが話していたのを見かけたとき、どっちもこれ以上にない、穏やかで優しい表情をしていたから……。
それに屋上では、冷静な判断を失うほどに、美都場は桜を傷つけられたことに怒っていた。あのときの美都場は、桜のことしか頭になくて……
別にふたりの仲を壊そうなんて思っていない。正確には「思えない」だけど…
そもそも絶世の美女とこんな何の変哲もない地味女が恋のライバルなんて笑える話だ。
美都場に恋しているこの気持ちを、消そうなんてことはしない。私は私で、誰にも打ち明けることなく、ひっそりと心の奥底に抱いているだけ……。
「おい。聞きたいことはもう終わりか?」
美都場の言葉に、ハッと夢から覚めたような感覚に襲われた。

