―ガタ… 先に席を立ったのは、兄の透哉だった。 チラリと見た視線の先には、キレイに片付けられた食器。 「行くの?透哉」 この日やっと初めて、家族の声を聞いた。 「ああ…」 「そう。行ってらっしゃい」 チクリ…と胸が一瞬痛む。 「行ってらっしゃい」なんて… 律子が私に言ってくれたことは一度もない。