な、何だか、怖い。
戯画なら、二人の間に火花が立っていそうだ。
「なら、一つ面白い話をしようか」
私の写真を見ながら、彼は言う。
返してもらおうと手を伸ばせば、私の届かない距離に持っていかれる。
「雛との出会いの話だ。雛は、絡まれていたところを助けられてから、だと思っているみたいだけど、実はその一ヶ月前から俺は雛のことを知っていた」
返してー、とやっても、手を握られ、阻止されてしまった。
「七月のあの日、全国的な猛暑。まだ暑さの耐性が乏しい時に、俺は運悪く今のような営業をしていた」
そうこうしている内に、写真は彼の胸ポケットへ。
「熱中症寸前。公園のベンチでダウンしていた俺に、話しかけてくれた女の子がいてね。自分のことじゃないに、ひどく焦ったように心配して、冷たい飲み物や氷を近くのコンビニから買ってきてくれた。炎天下の中走って、汗だくで、俺の介抱をしてくれたんだ」
写真はジャケット下のシャツのポケットに。ど、どうしよう。取りたいけど、彼の胸元をさわさわしてしまうような形になっちゃう。
「その無償の優しさに心打たれた。彼女の在り方に感動し、しばらくは、その日のことしか頭になかったほどだ。これが愛情であると知ったのは、いつかまた会えるだろうと休日は必ず行くようになったあの公園でのことだ」
でも、危険物を彼の胸元に入れておくのは……。そっと、触らないように取れば。


