「…帰って来たね、人間界」
「……うん」
あたしは壁に寄りかかって口元を抑える。
完全に酔って帰ってきました。
5分くらいでワールツから地球までこれる筈なのに…。
完全に間違えたらしく…。
5時間半かけて、戻ってきた。
「…あたし、異次元空間では行きたくない」
「…そーだな。今度から違う方法が出来たらいいな」
羽園君も酔ったらしく、顔が真っ青になっている。
「…嶺雨」
「…どうかしたの?」
「…嶺雨の家に着いたら…、『過去を視る砂時計』の創り方教えてあげる」
「…え?」
過去を視る?
あたしの失くした過去を視れるの?
「…おう。だからさ?俺のこと知ってよ」
羽園君を知る?
「うん。羽園君のこと知りたい」
知ったら、あたし達の関係は終わってしまうのかな?
過去(まえ)のあたしに戻れるかな?
ホントの笑顔を…向けられるかな?
作らなくていいのかな?
偽らなくていいのかな?
「…雨雅にとっては、嫌な過去だと思う。だから…嶺雨だけ視て」
「分かった」
きっと、キスの件だよね?
もう、偽りたくないよ。
お母さんの笑顔を思い出す。
優しくて…ふんわりしてて…、頼りなくて。
でも、綺麗だった。
歩き出した羽園君。
あたしは小走りで隣を歩く。
「…?あ、ごめん。速かったよな」
困った様な笑みをあたしに向ける。
「あ、うん。羽園君ってこんな喋り方だったっけ?」