私立N高等学校。

それが俺、旭日時雨(アサヒシグレ)が通っている男女共学、全寮制の学校だ。部活動に力を入れているこの学校では部活動の推薦枠が広く、運動大好きっ子が多い事もあってか失礼ながらあまり頭がよくない生徒も多い。そんな中で特別得意なスポーツなんかがあるわけでもない俺は勉強して普通に受験。もちろん、ここで落ちました-なんて言ったらストーリー上問題しかないので見事に合格。新しい制服に身を包み、両親にしばらくの間の別れを告げれば今後の生活を楽しみにしながら俺は高校に入学した。


それから1週間。


チャイムと共にクラスの雰囲気も和らぎ徐々に騒がしくなりながら始まる休み時間。だんだんとクラスの中でグループが出来始めた頃、もちろん俺にもちゃんと友達がいるわけだが…。俺の友達は昔からなぜか変わり者ばかりで、今回こそはと思っていたのだが残念ながらそれは叶わず。高校でも出来た友達はやはり変わり者であった。


「なぁ時雨。お前は黒髪ロングのあの子と茶髪ポニテのあの子、どっちが好みだ?ちなみに俺はあっちのポニテの方だな。やっぱり女はくくってる方が可愛い…」
「悪いがお前の好みの話はクソほどどうでもいい」

俺の所に来て早々女子の話をし始めたコイツは斉藤諒也(サイトウリョウヤ)である。
長身で野球部所属な彼はいかにもスポーツしてます、という汗臭い雰囲気を漂わせる事なく、むしろ好印象な爽やか風を身に纏ったなんちゃって爽やか青年だ。なんちゃって、というのは会話を聞けばわかる通り、女好きの残念な爽やかであるという事。ただし外見は人並みちょい上でモテモテのイケメン!…とまではいかなくともそれなりに女子から好かれる。それこそ学園1のイケメンとかとは違い、手が届きやすいイケメンなことからそれなりに女子から告白もされるそうだ。だが以外な事に「今は野球に忙しいから」と付き合った事はないらしい。女好きのくせによく分からん奴だ。…まぁイケメン爆発しろに変わりはないわけだが。

そんな諒也がなぜ俺と友達なのかというとそれも特別な理由があるわけじゃない。たまたま入学式で話しかけられ、たまたま仲良くなった。それだけである。


「そうだよ、3次元の女の話なんてクソほどどうでもいいんだよ!それより見てみなよ、この子!!すごく可愛いだろう!!」
「「……」」

そういいながら俺たちにスマホの画面をそれこそ押し付けるように見せてくるのは宮野薫(ミヤノカオル)でこいつも俺の友達だ。
こいつは諒也とは少々違うタイプ、いわゆるオタクである。身長は俺と同じか、俺より少し低い(俺の身長は175cm)のこいつは顔こそイケメンなのだが性格に問題があってモテた事は一度もない(本人談)。それに薫からすれば「人間にモテたからって何になるんだ?」と言っていた。恐ろしい奴である。野球バカな諒也とは違って頭がいい薫はテストの成績が上位なのは当たり前(同じ学校出身の奴曰く)、そしてゲームの強さも異常、それに加えて運動神経は諒也ほどではないが人並み以上とそこだけ見ればすごくモテそうなのに。それなのにオタクとは恐ろしいもので、オタクという事が薫のイケメン要素を打ち消してしまっている。

こいつとも入学式にたまたま仲良くなった。ほんとたまたま。むしろなんで仲良くなったのか俺もわかんない。

ちなみに言っておくと2人とも俺から話しかけたわけではない。人見知りな俺はそんな勇気持ち合わせていない。入学式中にぼーっとしてたら何故か話しかけられた。2人いわく、なんかおちょくりがいがありそうだったとかなんとか。失礼極まりない話である。