流side
将生から話を聞いた俺は、急いでヒカルの家へと走っていった。
誰も止めるやつなんていなかった。
むしろ行くと思っていただろうし、
自分が行きたいって思ってるんだろう。
家に着くと、俺はドアをノックする。
ガチャと開いたドアからは、泣いているヒカルが出てきた。
「おい、ヒカル」
俺の言葉に泣きつらを持ち上げるヒカル。
「そんなに辛いのか?悔しいのか?」
ヒカルは何度も何度も頷いた。
大粒の涙を流し、鼻水までも垂らしている。
「現実なんて泣いても代変わらねぇよ」
俺が言い放った言葉に、ヒカルは悔しそうに拳をにぎりしめた。
俺にはヒカルの気持ちなんて全部わからない。わかるわけがない。
何不自由ない家に健康で生まれて、好き放題やって来た俺なんかに、わかるわけがない。
でも1つだけお前に教えてやる。
「…辛いのはお前だけじゃない」
「??」
「生きてりゃ誰だって辛いことはある」
「………」
俺はヒカルの目を見つめながらまっすぐ言った。
「誰だって辛いことはある。お前の嫌がることをしてくる奴だって、辛いことも悔しいことも経験してる。だから恨むことだけはするな」
ヒカルは、俺から目をそらさずに真面目に聞いていた。
「相手が子供みたいな甘い考えで生きてるなら、お前を馬鹿にしてるなら、お前が大人になればいい。強くなればいい。わかるか?ヒカル」
俺の言葉にゆっくり頷く。
「泣いてもなんも変わらない。お前から不自由が無くなるわけじゃない。でもな、お前の明日は、明後日は、来月は、来年は、10年後は、お前次第で変えられるんだよ。」
「ぼく…しだい…」
「ああ、男なら泣くなとは言わない。限界になる前に泣け、俺を頼れ、仲間を頼れ。ただ、感情に任せて行動はするな。」
「う…ん…」
「もう二度と…こんなことはするな。」
「し…ない…」
「友達だろ?仲間だろ?独りでで抱えんなよ」
「あ…りが…と…」
ヒカルは泣きながら俺の腰に手を回す。
俺はヒカルの頭を撫でながらこういった。
「お前と過ごせるこの3年間で、今までの辛さとか悲しみが、上書きされるくらいの、最高の青春を俺達がお前にやるよ」
そうだ。
俺が救えばいいんだ。
辛いなんて悲しいなんて思いよりも
誰かを憎んでしまうよりも
過去を後悔し、未来に絶望するより
俺達がお前に生きる楽しさ、幸せ、
そして誰もが一生忘れない「青春」をお前に嫌ってくらい味わわせてやる。

