ヒカルside



僕は龍と康平とお昼休み、販売機に飲み物を買いに行った。

トイレがしたくなったから、近くのトイレにでも行こうと考えていた。



「といれ、いく…」

「ああ!じゃあ販売機行ったら、そこのトイレまで迎に行くから動くなよー」

「うん…!」

「じゃなっ」



僕は、トイレに向かった。
誰もいなかったから、何も言われずに、終えることができた。

独りのトイレはいつも緊張するんだ。


僕は、手を洗い、トイレ入口で将生と龍を待っていた。



「うわ、おじさんいるよ?」

「やだー…まだ学校きてるの?キモイ!」

「早く死んで欲しいわ~地球のゴミだよ」



僕にはそんな会話が聞こえてきた。
いつもなら、誰かが通るたびに、俯いている。

しかし、今回は
“死ね”“ゴミ”僕の嫌いな単語。

だから僕はちらっと顔を見たんだ。


こいつの顔は死んでも忘れないってくらい、恨みが強かった。

いつから僕はこんなに意地悪になった?

そんなのわからない。
ただ、悔しくて、恥ずかしくて…。



通り過ぎたあと、キョロキョロしていると、またさっきの女が現れた。

僕の前をなに食わぬ顔で通りすぎた。

さっきはあんなに文句を言ったのに
一人になれば見えてないフリをしてるのか?

許せない…



僕は通りすぎた彼女の後ろ姿を追いかけた。

なにがしたいとか、なにがあるとか、そんなことじゃない。

ただ、怒りと憎しみだった。

いままで耐えてきたのに…
今日だけはなぜだか我慢がきかなかった。



「…え?」



僕の走る音に気づいた彼女は後ろを振り向いた。僕の目はまっすぐ彼女を見つめていた。

だから彼女は逃げたんだ。

それから僕は、数分間ずっと彼女をおいかけまわしていた。


彼女は何かにつまずいた。
だから僕も走るのをやめた。ゆっくりと近づいた。


しかし、僕の前に、新が現れた。


新は僕の肩を掴んでこう言った。


「お前はなにしてんだよ…はあ、はあ…」


息切れしている所から見て、きっと走って探し回っていたんだろう。

すると、今まで怯えるだけだった彼女が急に泣き出したんだ。

新は彼女を見て、俺に訪ねてきた。



「なにがあったんだ?」



後から駆けつけた、将生と龍に、僕は全部を話した。



いつものことなのに
なぜだか今日は笑うことも泣くこともできなかったんだ。

その理由は僕にも誰にもわからない…