『美夜、そろそろ俺いくからさ』

「うん、明日は入学式休むんだよね?」

『おう、ごめんな?』






俺は玄関で靴を履いた。







「ううん、大丈夫!呑みすぎないでね!」


『わかってる、じゃあな』


「うん、いってらっしゃい♪」


『おやすみ』


「おやすみ~♪」






手をふる美夜を見て、ドアを閉めた。






美夜の親は、海外で仕事をしていて

昔はよく遊びに連れてってもらったりしたが



中学にはいってからは幼馴染みの俺でさえ

5回程しかあっていない。






付き合ったのが、ちょうど中2の春。






ずっと好きだった美夜に告白した。

フラれる覚悟だった。

俺は、美夜をたくさん泣かせてきたから。



それに比べて、康平は優しかった。

喧嘩する、俺と美夜を見て、笑っていた。













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『ねえ、さっきから話し聞いてるの?』




美夜が俺の顔をのぞきこんできた。




「あ、ああ。うん。」




白の長袖ブラウスに赤のリボンをして

スカートから見える細く白い足。


背中の真ん中までくらいの長さで

毛先がくるくる髪の赤っぽい髪色。



小さな手に、小さな顔、

高く元気のある大きな声の美夜。



身長は148くらいって聞いた。





俺はタバコを吸おうと口にタバコをくわえた。





それを見たタバコが嫌いの美夜は

俺のくわえるタバコを奪って捨てた。




『おい、お前なに捨ててんだよ』


「タバコは絶対にだめ!」




あきらめずに、もう1本とりだしくわえ

俺はライターを取り出し火をつけた。





「美夜、タバコ吸う人嫌だ」

『へえ』





そっけない返事に美夜は少しいじけていた。


そんなところも可愛い。とか俺は思っていた。






「ねえ、美夜の前で吸わないでよ」

『なんでだよ、いいだろ、タバコくらい』



「流はさ、美夜に嫌われてもいいわけ?」

『は?なんだそれ、いきなりかよ』

「タバコ吸ったら...早死しちゃうよ?」




心配そうにうるうるした目でみつめてくる。

こんなことを、こいつは本気でゆう。




そして、美夜のしゃべり方は

回りの男からは、可愛いと言われている。



自分のことを

『私』とか『うち』とかでもなく美夜と呼ぶ。



確かに可愛い。



でもそれは、美夜だからだと俺はつくずく思う。




『早死なんてしねーよ』


「わかんないよ、そんなの」


『こんなことでいちいち心配すんなよ』


「心配されたらめんどくさいの?」


『んなことねーけどさ...』


「じゃあ心配させてもらいますうー」




美夜は舌をだして、少し笑った。




『死なねえーから心配すんな』


「じゃあさ、美夜と約束して?」


『なんの約束だよ』


「1日5本までタバコを減らすこと」


『は?無理、絶対無理だろ』





俺は1日に20本、つまり、一箱は吸う。



なのに、いきなり5本とか






ーーーー絶対に無理だ。








「ねえ、約束してくれる?」


『おう、約束する』





俺は面倒になって、適当に返事をした。


守る気なんてサラサラない約束。





「ほんと?やった♪約束ねっ♪」






俺はずっと美夜の笑顔が好きだった。


なのに、泣かせてばっかりで


なにをしても美夜を怒らせ悲しませてきた。





美夜と1度も約束を果たしたことはない。




いつも、口だけの約束を本気にしてる美夜。





俺は裏切り続けてきた。





何度俺が笑顔にさせて

この笑顔を何度俺が消してきたのか。







そう、この時、俺は美夜を見て思った。






約束を最後まで守りたい。


美夜は俺が笑顔にしたい。



ぬか喜びなんかじゃなくて....



本気で美夜を大切にしてやりたい。





そう、俺は思った。





だから、あの日、俺は美夜に告白した。





『美夜』

「ん?なに?」




ふーっ、と白い煙をはいた。





『俺はお前が好きだ、昔から好きだった』




驚いた顔をしていた。




『俺と付き合えよ』





もっと言い方はなかったのか。


自分で後悔した。



性格がこんなだから仕方ない。



でも告白くらいちゃんとしねーとな。







俺はタバコの火を消して、美夜を見た。








『美夜、俺はたくさんお前を泣かせてきた』



「うん」



『でもこれからは違う、俺はお前が好きだから

大切にしたいと思ってる。』






美夜は澄んだ瞳で俺を見つめていた。





『俺と付き合ってくれるか?』


「それ本気だよね?」


『ああ、こんなんでウソつかない』


「そっか」





美夜は俺の隣に来て、ゆっくり座った。





「美夜も流のこと好きだよ。」




そう言ってにこっと少し恥ずかしそうに

まっすぐに俺をみつめて笑った。







美夜のこの笑顔を永遠に


俺は忘れない。





いや





忘れたくない。










中2の春、夜の公園で、

俺は美夜とはじめてキスをした。
















とか、なんとか、振り替えっていると

もう、康平の家についた。







中ではもう、わいわい、騒いでいる。



今は、まだ、夜の10時だ。



インターホンを押して、ドアが開くのを待つ。






ドアが開いた。







「お、流、お前遅いぞ~」




康平はもう酒が入っているらしい。

早めに出たのにもう呑んでのかよ。




夜から呑むと聞いてたのに、はやくね?




俺は靴を脱ぎ、リビングへ向かった。





「お、流やっときたか、お前おそいぞお~」




新が頭にタオルを巻いてビールを呑んでいた。

顔が真っ赤になっている。







俺は龍がいるソファーに座った。




「はい、これ、呑めよ」




龍は俺にビール缶を渡した。




『なぁ、呑むのはやくね?』


「俺らが明日入学式だから時間変更したよ?」


『は?ならもっと早く言えっての』


「え、俺が流にLINEしたぜ?」


『は?...』




LINEを開いた、

新から確かにLINEは来てた。





なんとなく今まで小さめにしていた

LINEの通知を大にしておいた。








俺はビールを開けた。

一口呑んだ。






やべぇ、ビール最高。