次の日、俺たちはヒカルを呼びにヒカルの


家までいつものように迎えにいく。








ヒカルの家はボロボロのアパート。



インターホンすらないから、いつものように





コンコン コンコン




とする、台所のまどから


ぴょんぴょんと飛びながら俺たちをみて


ドアを開け靴をはいて家から出るヒカル。





そして、おはようとお辞儀をする。





「おはよー」


『はよ』





俺達はそれぞれ返事をして、学校へ向かった。




グラウンドにはバスが着いていた。






少し遅れぎみだったようだ。







「「5組の生徒はこちらでーす」」






先生がメガホンを使っている。



班ごとに並ぶと、すぐに


隣のクラスの奴らがザワザワする。








女子がヒカルをみて笑う。









ヒカルは俺の前に並んでいたから

うつむいているのがすぐにわかった。





俺は隣の女たちを睨んだ。





すると、目をそらすが、あからさまに

ヒカルのことを笑い者にしている。








どこからか、声までもれてきた。








あれおじさんだよね?


噂には聞いてたけどほんとにいたのか


障害なんだろ?


5組でいじめられてるんだってよ


あたりめーだろ、そんなの







はぁ、と俺は深いため息をつく。






ヒカルの前にいる康平は俺をみて

切なそうにヒカルに目を移す。







すると、隣のクラスのひとりの男が


こういった。













“ どんな手をつかったか、わかんねーけど


佐久欄のヤンキーバックにつけてるらしいぜ


貧乏だから金じゃねーだろうけど、パシリと

かやらされてるらしいぜ”











その言葉に俺、康平、将生、龍、新は




いっせいにそいつを見る。













誰がヒカルをパシリにしてるって?









俺はその男の所にいこうとして立ち上がると




ヒカルのズボンの裾をひっぱる








「いいんだ、ぼくは、大丈夫」








ヒカルは、そういっていた。














まて










まて











まて









なんだそれ。









ヒカルの声は、想像以上に高く、透き通って

いたんだ。



しかも、なめらかに、しゃべっている。











『ヒカル、お前しゃべれんのかよ?』








するとヒカルは驚いた顔で口を塞ぐ。

















まて、まて。








ヒカルはなにかをかくしていた。








その会話をみていた、四人も驚いている。







ヒカルはポケットからけーたいをとり


文字を打つ。






みんなにはなしたいことがあるんだ

ばすのなかでもいい?

みんなおこらないできいてほしい






それを俺にみせた。




俺は頷き、けーたいを四人に回した。





すると、みんな頷いた。















でも









だれも笑っていなかった。












あの、能天気な将生でも








深刻そうに











心配そうに











切なそうに











ヒカルをただみつめていた。