明日は入学式。





けど、今日の夜から中学のメンバーと

先輩と後輩とみんなで

康平の家で呑むことになってる。





入学式行かないで朝まで呑むか、

3時くらいに帰って4時間くらい寝ようか、

寝ないでそのまま入学式に行こうか、





俺はいますごく迷っている。





その理由は、隣で、彼女の美夜が高校の制服

を着ながら鏡を見てはしゃいでいるからだ。





悩んでいる俺をそっちのけに鼻歌を歌っている。





「ねえ、似合うかな?♪」




くるっと俺のいる方向に振りかえる。




『ああ、似合ってる』




美夜は笑顔になり、

また鼻歌をうたい出していた。




そう、問題は、こいつ、美夜だ。




入学式ね、校門で写メとろうね!

終わったら二人でご飯たべよう!

ふたりで入学式いこうよ!

流の制服姿はやくみたいなー




とか、なんとか、ゆうもんだから

酒が残ったままだと、さすがに不味い。




美夜がこんなに楽しみにしてる入学式。

酒を呑んで、そのまま来ていいのか?


睡眠もわずかに出席してもいいのか?




そればかり、考えている。




しかし、俺は友達も大事にしている。

だからこそ、迷う。




美夜を連れていければ、はやい話だ。




ふたり酒を呑めば、ふたりあいこになる。




でも、今回は男だけで呑む約束。

彼女だからって先輩がいるから頼んでも

なんだか気まずいな。



怒りはしねーだろうけど、

上下関係に礼儀は付きもものだ。




『美夜』

「はーい、なになに?」




美夜は俺のところにチョコチョコと歩いてきた。




『今日みんなで呑むんだけどさ』

「うん」

『行っていいか?』


「入学式は?どうするの?」

『行こうか迷ってるよ』


「ふーん...」

『行っていいか?』





美夜は少しうつむいて、爪をいじっていた。




「別にいいよ、行ってきてよっ」




美夜が無理しているなら諦めようと

思っていた。

けど、笑顔の美夜をみると安心した。




『ん。ありがとな』




俺は美夜の頭に手をおき、くしゃくしゃに

髪の毛をなでて、立ち上がった。



そして、ベランダに出て、タバコに火をつけた。





そんな俺を、美夜は笑顔で見ていた。







ーーーーーーーーなぁ、美夜。






この時のお前はまだ元気だったな。



美夜、ごめんな。



俺があの日、朝から入学式に行っていれば

美夜はこんな目にあわなかったのに。





本当にごめんな。