俺は看護婦のいるとこへ美夜の部屋を聞きにいった。



『すみません』


「はい」


『牧原美夜の病室はどこですか?』


「少々お待ちください」




俺は近くにあった並んだソファーに

おんぶしていたヒカルをおろした。



膝をみると

500円玉より少し大きめの傷があった。




「あのー、牧原さんの病室ですがー」


『あ、はい』




若めの看護婦は、ベンチに座るヒカル

をちらちら見ている。



ヒカルは恥ずかしそうに、

ベンチから降りて将生の後ろに隠れた。



そんなヒカルをこの看護婦はまだガン見だ。



嫌気がさした俺は看護婦の目線の先に立った。




『あの』



苛々していたため、声が強くなってしまった。



「あ、ぁあ、はいっ」



オロオロしているのがわかる。



『美夜の病室はどこなんですか』



「あ、えっと、305号室です」




そういいながらも将生からかすかに見える

ヒカルを見ていた。




『いくぞ』




俺はそう言い、苛々する看護婦を通りすぎた。




「あの」



看護婦が俺を呼び止めた。



『なんですか?』



すると看護婦は、また、ヒカルを見た。

そして、ヒカルに近づき、目の前でかがんだ。





「このケガ、消毒したほうがいいですよ」




ヒカルは将生の後ろにかくれて

将生を盾にしていた。




「大丈夫ですよ、私が手当てします。」




優しく笑う看護婦はヒカルの小さな手をとり

どうぞ、と、近くのベンチに座らせた。




「ちょっと待っててください」




にこっと笑うと看護婦は小走りでどこかに行った。


俺はヒカルに近づいた。




『よかったな、優しい看護婦で』




するとヒカルは笑いながら



「...う..うんっ」



そう元気に返事をした。


そして、看護婦は箱をもってきて

消毒して、ガーゼをはった。


そして、俺たちが気づかなかった手のひら

のケガには絆創膏をした。




「転んでケガすると、人は手をつけちゃうんで

大抵、手のひらもケガしちゃうんですよ」






なんだよ

意外と悪い奴ばっかりじゃないな。



俺、さっきの子供と大人みて

見た目で人を決めてた。



あの大人の対応と、さっきまでの俺は

似ていたのかもしれない。





ヒカルの嬉しそうな顔を見ると俺まで笑顔になる。






「はい、おわりましたよ!」


「あ..あり...が..とう..」



看護婦は一面の笑みで



「どういたしまして」



と答えた。





最後に俺たちも看護婦にありがとうと言った






看護婦は優しく笑いながら




「いいお友達がいて幸せですね♪」




と、ヒカルにいい

どこかの部屋へ入っていった。






あの看護婦は

ヒカルが俺たちの同級生、友達、だとわかっていた。



あの人は見た目で判断しない。


とても素晴らしい人間だった。